蓮園ブログ

人生に寄り添う農業

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『愛知の「食」を学ぶ、楽しむ』での講義

愛知大学で、田島蓮園の蓮にかける想いを語ってきました!!
小判天の長田料理長が担当する、『愛知の「食」を学ぶ、楽しむ』という講座で、有難いことに講師として登壇させて頂いたこの機会。
もっと沢山の方に、四季折々の蓮文化を知ってもらい、様々な形で蓮を楽しんでほしい!!
そんな想いで「真面目で、愛される日本の蓮ブランド」を目指す田島蓮園の代表として、蓮根だけではない蓮という植物の魅力と、今後のビジョンをお話しさせて頂きました!

 

しかし、就農した4年前は、こうして人前で話が出来るなんて考えられなかったなぁ…。
なんせ、話すネタも無ければ、話す機会も人との繋がりもありませんでしたから。
振り返れば、4年間の仕事を通じて沢山の方との出会いに恵まれ、料理やお茶など、蓮文化を積極的に伝えたいと思うほど知識を身に着けることが出来ました!

 

貴重な機会を頂いた長田料理長、講義をサポートしてくださった山下さん、榊原さん。
そして、講義に参加してくださった皆様、ありがとうございました!!

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長田料理長、妻の沙紀、ありがとうございました!

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弊社の蓮根をふんだんに使った料理、美味しかったです!

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近頃、人前で話す機会を頂くことが増え、少しずつ話が洗練されてきました。

求められる嬉しさと責任

過ぎし2019年を振り返り、これ程「求められた」一年は自分の人生の中で初めてでした。

年末は今までに無い注文の量で、夜中の日が暮れるまで仕事をしても注文頂いた蓮根を揃えるのが追い付かない程でした。

 

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年末に出荷した直販の蓮根(大量)

 

私が就農した2016年の年末は、農協以外へ出荷する荷物は無く、せいぜい友人や親戚にお歳暮として蓮根を送るくらいが関の山だったのを覚えています。

年末の繁忙期も、18時には仕事を終えてのんびりしていました。

あの頃は、(直販をするほどの実力が無かったのも事実ですが)お客様の顔が見えない中、ただただ目の前の蓮根を出荷していく作業がしんどかったのを覚えています。

 

先の見えない暗中模索の仕事を続けていくのが辛くて、サラリーマンをしている同級生から取り残されていくように思えて寂しかったなぁ…。

でも、そんな中でも仕事を続けてこられたのは、やっぱり人との繋がりがあったからだと思います。

 

特に、直販を始めたころからずっと蓮根を使ってくれている、名古屋の蕎麦処『大橋庵』は僕にとって物凄く大事な場所です。

大将に「最近は、昔ながらの糸を引く蓮根が手に入らなくなったから、直接新鮮な蓮根を仕入れられるのは有り難い。」と言って頂いたときの嬉しさは忘れられません。

それから、あえて大量生産の波には乗らず、伝統的な鍬掘りの蓮根で付加価値を追求していく戦略に踏み切ることが出来たのを覚えています。

 

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大橋庵の年越しそば

 

実は年越し蕎麦を、大橋庵で手繰るのは初めて。

いつもざる蕎麦ばかりですが、かけ蕎麦も美味しかったです!!

これからも、お客様に恩返しが出来るよう、精一杯農業に打ち込んでいきます。

食の歴史を紐解く

季節はすっかり秋色に染まり、過ごしやすい日が増えてきましたね。

週末は外に出かけると、どこかからお祭りの音色が響き、何だか聞いているだけで楽し気な気分になってきます。

 

さて、田島蓮園のある愛西市の隣町、津島市で10月6日(日)に秋祭りが開催されました。

その陰で、実はヒッソリと弊社の食材が秋祭りをサポートしていました!

 

秋祭りを運営するスタッフの皆さんが食べる、『秋天衣(あきてんね)』というお弁当の食材に、蓮の実と蓮根を使って頂きました!

蓮の実は「蓮の実と栗のおこわ」に、蓮根は「蓮根と2種の味噌のはさみ揚げ」に料理され、お祭りの運営を終えた方々の胃袋を満たしていました。

他にも、津島市で江戸時代から続く、歴史ある糀屋さんの甘酒を使った「あまざけ入り卵焼き」や、郷土料理ののモロコ寿司も大人気でした!

 

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左下:蓮の実と栗のおこわ 中央下(手前):蓮根と2種の味噌のはさみ揚げ 中央下(奥):あまざけ入り卵焼き 右下:モロコ寿司

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秋天衣(あきてんね)のお品書き

今でこそ、あまり食べられなくなった蓮の実ですが、こうして地域の活動に溶け込み、実際に食べられてこそ食文化は継承されていくのだと思います。

そして、歴史ある食材には必ずストーリーがあり、ストーリーは食の質を向上させてくれます。

 

皆さんも、食欲の秋に郷土の食文化をお楽しみください!

謎多き蓮の花 其の一

厳しい残暑が続く今日この頃、皆様お元気でしょうか?

私はと言いますと、初めての蓮の花の出荷を何とか乗り切ったのも束の間、

来週から始まる蓮根の収穫準備を着々と進めております。

 

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荷造りされた蓮の花 品種は『早尾紅蓮(はやおぐれん)』

 

始めて蓮の花を育ててみて気づいたのですが、蓮の花に関する情報は世間で殆ど出回っておらず、ぜひ学んだことをお伝えしておきたい!っと思いこの記事を書いています。

という訳で、今回のテーマは『蓮の花Q&A』です!!

今年、皆様から頻繁に頂いた質問に回答していきます。

 

Q1.蓮の花が咲くときに「ポンッ」と音がすると言われるけど、本当なの?

A1.蓮の花が咲くときには、残念ながら音はしません。

 

これは、蓮の花見会でよく頂いた質問ですね。

蓮の花は日の出と共に花を開くのですが、その瞬間に音がすると言われています。

ですが、昭和10年に東京の不忍池で実地検証を行った結果、音はしなかったそうです。参照:ハスよもやま(http://www.kumamotokokufu-h.ed.jp/kokufu/koutei/hasuyom.html

確かに、日の出前から田んぼで仕事をしていて一度も蓮の花が咲く音を聞いたことがありません。

 

 

この「ポンッ」という音は、蓮の花が早朝に開花する早朝に、静寂を打ち破って発する音と言われています。

この音は耳で聞く音ではなく、体で感じる音であり、聞き手の感覚が大きく影響するようです。

なる程、これだけ朝の蓮田にいて開花音を聞いたことが無いのは、私の心が仕事で静けさを忘れているからかも知れませんね…。笑

 

明日から生憎の台風ですが、蓮の花は6月下旬から8月上旬まで開花します。

「清らかな心」という花言葉のように、華やかで端麗な香りと美しい姿で咲き誇る姿は、見る人の心を整えてくれます。

是非、早朝から蓮の花見にお出かけください。

 

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夏の空と蓮の花(ロータスホワイト) シンプルで綺麗な色合いが好きな一枚

 

農業を始めた経緯

年号が令和となり、早くも一か月が過ぎました…ホント時の流れは早過ぎますね。ワタクシはと言いますと、種蓮根の定植も無事に終えることができ、束の間のゆったりした時間を過ごしたいと思いつつ、今までやりたくても出来なかった仕事に取り組んでいます(まさにブログの執筆とかね)。笑

 

 さてさて新しい年号となった訳ですが、新しいことを始めるには覚悟が必要になる時があります。私が農業の世界に飛び込んだ時は、今思い返せばそれなりの覚悟をしていたと思います。

 私は14歳の時に父親を癌で亡くしており、父の死後は祖父と母が蓮根の仕事を引き継いでくれていました。私は自分の将来をハッキリと決めることが出来ず、大学卒業後は就職をする予定でいました。

 

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父の遺影と乾杯 顔が似ているとよく言われます

 

そして、大学を卒業する年に私は思い悩みました。就職か就農か、自らの進路を自分の手で選ぶことが出来ない鬱屈とした状態が続きました。人間は弱いもので、最終的には教会へ通いながら「自分は何のために生きるんだろう」と、真剣に考えていました。笑

 そんな時、生前に父が言っていた言葉を思い出しました。「迷ったら人の選ばない方を選びなさい。その方が絶対に面白い人生になるから。」私はその言葉に導かれるように、自分しか選べない家業を継ぐという選択をしました。

 

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大学生の頃の私 アルバイトで忍者をしていました

 

 実際のところ、私は小さい頃から農業をやりたいと考えたことはありません。どちらかと言うと、田んぼの畦にいる昆虫を追いかけて観察していることの方が楽しく、将来は昆虫の研修者になりたいと思っていました。

 しかし、農業の特に蓮根という作目を栽培していると、地域で蓮根を生産していることで守られている自然の生態系を、間近に見ることが出来ました。小さい頃に遊んでいた生き物たちは、蓮根があったから生きていられたのです。それを知ってから、自然への負荷が少なくなるよう、農薬と化学肥料を使わない栽培に切り替えました。

 

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田んぼの生き物の撮影会が突然催行される田島蓮園

 

 また、やはり私も農家の血を引いているのか、自分の育てた野菜を美味しいと食べてもらえると至上の喜びを感じます!そんな消費者の声を直に聴くために、蓮根の直販にも取り組んでいきました。

 

 この決断が正しかったかどうかは、今はまだ分かりません。しかし、間違いなく言えることは、私は人生をかけて打ち込める一番楽しい選択をすることが出来た、ということです。

 これから先、私の周りで迷い悩んでいる人がいれば、自分自身がそうであったことを思い出し、「迷ったら人と違う道を選びなさい」と声を掛けるでしょう。

経営理念を持って農業をする必要性とは

5月も下旬を迎え、株式会社田島蓮園を設立して最初の決算を迎えようとしています、社長の田島寛也です。会社を始めてから約1年が経過した節目として、弊社の経営理念を考え直しています。というのも、この1年間でブランド化ツールの導入、直販取引の増加、農業体験ツアーの催行、加工部門の立ち上げ…などなど、様々な変化に恵まれました(お陰様で体調も随分と崩しました…笑)。そういった変化を経て、自社の目指す方向性を改める必要があると考えた訳です。

 

 そもそも『経営理念』とは、「企業経営における基本的な価値観・精神・信念あるいは行動基準を表明したもの」と広辞苑に定義されています。簡単に言えば、「何のために経営を行うかという目的」です。

ちなみに、私の所属している「愛知中小企業家同友会」では、『経営指針書』という「経営理念」、「ビジョン」、「経営計画」をまとめた冊子を作成することを推奨されています。意識の高い経営者が集まる団体でも、経営指針書を保有している企業の割合は33.4%(2016年度調査)に収まっています。逆に言えば経営指針を持っていれば、かなり意識の高い企業と認識されるのではないでしょうか。

 

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出典(http://www.douyukai.or.jp/company-raise/2016/0204-093816.html

 

 経営者が経営理念を定め、社内外に向けて発信することが必要な理由は、いくつかあります。

  1. 経営の軸を作ることが出来る

企業の根本的な価値観を示すことで、「何のために経営をしているのか」という軸を作ることが出来ます。そのため、経営課題に対する判断の基準を明確にすることが出来ます。

  1. 企業の社会的存在意義が明確になる

企業が事業を行い、どのように社会に貢献していくかを発信することが出来ます。消費者の価値観が多様化した現代においては、自社の立ち位置を明確にし、消費者と共感し合える関係を築く第一歩となります。

  1. 経営者と社員の共通の価値観が作られる

雇用者である経営者と、被雇用者である社員の間には価値観の相違があります。そのため、両者が共通の目的を目指して一丸となって働けるように、経営理念を定めることで労使相互の想いを重ねることが出来ます。

 

 しかし、家族経営が主体で経営とは距離が遠そうな「農業」という分野に、経営理念は必要なのでしょうか?答えは紛れもなくYESです。その理由は、農業という業界は長期的な視点で正しい価値観を示していく必要があるからです。

実際に3年間農業経営をしてみて思うことは、理念が無いと日々繰り返される作業のしんどさに潰されてしまうということ。数年がかりの長い時間軸で事業を行う農業では、何のために仕事を続け、社会のどのような場面で必要とされ、誰の役に立っているか分からなければ、とても高いモチベーションを維持していけません。

目的意識が無く、同じようなしんどい作業を繰り返すだけの仕事は、誰にとっても辛いはずです。そのため、例え家族だけで農業をしている場合であっても、一緒に働いてくれる家族のため、そして自社の農作物を必要としてくれる取引先のためにも、経営理念は作成するべきなんです!

 

 さて、前置きが長くなりましたが、田島蓮園の新しい経営理念は以下の通りです。

この理念と共に、来期も農業を通じて豊かな人生を育んでいきます!

 

・経営理念:

『人生に寄り添う農業』

 

・何のために経営をしているか:

関わる人の側に寄り添い、人生を豊かなものにするため

 

・社会的存在意義:

  1. 農業を未来へ繋ぐ担い手を育てること
  2. 農業が生み出す新しい価値を追求すること
  3. 農業で利益を最大化し経営を発展させること
  4. 農業と食を繋ぐ架け橋となり、関わる人を増やすこと

 

・社員に対する基本姿勢:

 信頼し、補い合う、会社にとって最も大切なパートナー